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航海中の病気

2019.11.02(21:19)
20歳~24歳まで乗っていた貨物船での話だ。

その船は、大阪近辺で荷物を積み、東京近辺への陸揚げを繰り返す船だった。
海路を使って荷物を運び、船が得た運賃の一部を船員が得る仕事になる。

とある日の事。

大阪府西淀川区の港で、船に荷物を積み込んだ。
出航は明朝6時。
船員の友人と尼崎の繁華街へ飲みに繰り出し、焼き鳥屋で一杯飲んだ。
生中一杯で出来上がってしまう程の下戸である友人だったので、

「もう飲めんわ。。。コンビニで買い物して帰らへん?」

となり、買い物を済ませ、船に戻った。
そして翌日、東京へ向けて出航した。

目的地は千葉県の市川市の港。
船の速力で一昼夜だ。(36時間)
出航した日の夜、突然腹痛が襲った。
最初は、ただの下痢か何かと思い、船内の食堂にある救急箱の中の正露丸を飲んだ。
が、症状は改善されなかった。

刻々と強くなる腹痛。。
その時初めて、「変なものを食った」と自覚した。

腹痛を克服、解決、回避する術はない。
"祈る"
しかないと思う。

私は、

「神様、、もう悪い事は一生しません、、許して下さい、、どうか!どうかぁあ、、」

と、都合の良い懺悔をしていた。
発作的に起こる腹痛の度に同じフレーズを神に祈った。。。

翌日、千葉県市川市の港に辿り着いた。
船長から病院へ行く事を許可されていたので、船が岸壁に着岸すると共に、直ぐに市川市内の内科へ直行した。

病院の検査の結果、
"カンピロバクター"という細菌が体内から検出された。

カンピロバクターは、鳥の生肉に含まれる事がある細菌で、良く加熱せずに摂取してしまうと、、、前述した通り苦しい思いをする。

原因は、焼き鳥屋で食べた"生鶏肉のユッケ"だったと思う。

体験した症状としては、
「食べた物がすぐ下る」
内臓自体が異常事態になるのだろう。
食べては腹痛。飲んでは腹痛と、記憶によると、
1週間近くまともな食事が摂れなかった。

お医者さんに言われたのは、
「ヨーグルトやバナナ、ゼリー等で脱水症状の回避と、体力の衰退を回避しつつ症状の回復を待とう」
との事だった。
市川市のコンビニでヨーグルトとゼリーをしこたま買い込み、帰りの航海を耐え抜いた。
全ての期間で、1週間近く腹痛が続いたのを覚えている。

これ以降、鳥の生肉は食べた事はない。



ちなみに船員の友人は航海中に、
"インフルエンザ"、"ノロウイルス"、"淋病"を経験した。
実績としては、トリプル役満になる。

体育会系+縦の業界だけに、先輩船員からは冷たい風が吹き、
"貧弱"、"華奢"、"病弱"等とバカにされていた。

だが、辛い思いを乗り越えただけあって、私がカンピロバクターで苦しんでいる時、
物凄く優しく介抱してくれた。

元気でやってるかなぁ ~明日もボンボヤージュ~
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船乗りと金の卵

2019.08.13(21:55)
今日の夕方のニュースで、母校で船乗りを目指す若者が紹介されていた。

内航船員の平均年齢は、50代以上がおよそ50%を占めていて、高齢化が著しいそうだ。
これからの日本国の物流を支える船員は、「金の卵」と言われているそう。

金の卵と言えば、2006年頃に国土交通省が発行した、商船学校系列のパンフレットにも全く同じ事が記載されていた事を覚えている。
そのパンフレットを読んだ当時の私は中3で、金の卵なら将来性あるなーと感じた事も覚えている。

私的には、最近の人手不足とAI化の流れ及び高齢化を考えると、どこに行っても高齢化した船員組織の下っ端から始めるより、金の卵が集結して新しい海運会社と最新の船舶、そして運航システムを作った方が面白いと思っている。

新しい海図には金脈が眠ってそう ~明日もボンボヤージュ~
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海難事故のニュース

2019.05.28(22:49)
先日、貨物船同士が衝突した事故のニュースがあった。

私も同型の貨物船に乗船していた事があるので、船員の方達が心配だ。

船の中でも、貨物船は沈没するまでの時間が極端に短いと教えられた。
貨物船の場合、船倉(貨物室)に区画が設けられている事があまりない。(荷物の運搬の効率を重視している為)
船倉に穴が空いた場合、海水が一気に流れ込むので、沈むのが早いと船乗りの先輩に教えてもらった事がある。

逆に、油槽船(タンカー)は、船倉に区画が設けられているので、万が一衝突が起こっても他の区画に浮力がある為、沈みにくいと記憶している。

船員の方の無事を心から祈っている ~明日もボンボヤージュ~
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凪はご馳走

2019.01.05(19:06)
昨日、NHKの「チコちゃんに叱られる」という番組で、「ご馳走様って何?」というコーナーがあった。

どうやら、韋駄天(いだてん)という足の速い神様が由来のようだ。

船乗りの頃、良く晴れた航海中に船長が、

「おー!天気ええのぅ!"凪はご馳走"やで!」

と、言っていたのを思い出した。

自分の中では、凪の日は船が揺れないので、ご馳走を作って食べられる事だと思っていた。
酒も美味いし、こぼれないし。
(時化の日は、まともに調理が出来なかった)

船長的には、凪の日は船のスピードが速く、航海の効率化によって、儲かる事を言いたかったのだろう。

気に入った ~明日もボンボヤージュ~
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ハワイへの夢

2018.10.29(21:22)
日本丸という帆船をご存知だろうか?

航海訓練所の練習船で、大型の帆船だ。
学生時代に3ヶ月間乗船し、帆船航海を学んだ。

実習で、マストの最頂上まで登る事があった。
帆を広げる実習だ。
海面からの高さは50メートルあった為、足が震えて仕方なかった。しかも裸足だ。
複数人でロープを引き、帆に風を受ける角度を変えて航海する。
帆船での航海中は、常に斜めの状態で航海するので、お風呂のお湯も斜めになる。
もちろん、まともに入浴した記憶はない。

日本丸での航海実習では、毎年ハワイまで航海するプランがあって、入学当初から非常に楽しみにしていた。
しかし当時、原油価格が高騰してハワイへの航海がポシャった。

8人部屋で生活したのは、後にも先にも日本丸だけだった。

稀な青春時代だった ~明日もボンボヤージュ~
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洋上のネット回線

2018.07.27(22:22)
陸に暮らすようになってから、つくづく思う事がある。
それは、インターネットの快適さだ。

学生時代、練習船で全国を周遊した時だ。
初めての船内生活だった。
電波は悪く、ケータイが繋がらないので、友人達と揃って船の陸側に移動する。
そして、自由の女神像の如くケータイを掲げ、懸命に電波を拾ってメールをしていた時が懐かしい。

PCでインターネットをする時は、ケータイでテザリングをして接続していた。

PS3でオンラインゲームをする際は、ネットを繋いだPCをルーター代わりにし、PS3に接続する二度手間をかけてプレイしていた。

洋上でのオンラインゲームは、頻繁にタイムアウトする。
陸から離れ過ぎると電波が届かないので、プレイ出来なくなるのだ。

そこで、陸側に設置したケータイに、外付けのアンテナを接続するわけだが、充電器の接続端子を使うため、代わりに充電ができなくなる。

その為、バッテリーの型が一致するケータイを買い、バッテリーが切れる度に都度交換したりと、苦労が絶えなかった。

陸では光回線という素晴らしい環境があり、洋上のネット環境とは比べ物にならない。
電波もある、電気もある。

便利というものは幸せなものだ ~明日もボンボヤージュ~
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シーマンシップ

2018.07.14(22:26)
  船乗りの学校で教わったシーマンシップというものがある。旧海軍からの伝統的な格言だ。
「スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り」
  スマートとは、無駄のない的確な判断と行動だ。一瞬の判断の誤りが、海上では命を落とす危険といつも隣り合わせだと言うことを忘れてはいけない。
  目先が利く。先見の明である。
一手でも早く情報を得ることで、船舶の海難を回避したり、時化を回避する。日頃の仕事でも予測した上で行動する。根回しみたいなものでもある。
  几帳面。定位置管理や危機管理である。
誰にでも幼少期に親から、
「整理整頓しなさい!」
と、怒られた事があるだろう。それである。
遅刻だったり計画性であったり、ズボラな人間は耳を塞ぎたくなる類いの名言だ。
  負けじ魂。諦めない精神力である。
如何なる状況においても、最後の最後まで力を出し切るということ。失敗を認めなければ失敗ではない!など、ポジティブに考えること。根性論でもある。
  全て、安全に通じるところがある。どんな時でも人命が最優先である。
突然の出来事を冷静に判断できる人は少ないだろう。
"もしも"に備える事は、"いざ"という時の為なのだ。
生きる為に活きる言葉かもしれない  ~明日もボンボヤージュ~
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生徒想いの教官の話

2018.06.15(21:13)
  高校3年の頃、避難訓練があった。
  将来、船乗りになる生徒に、火事、座礁、衝突による沈没の恐れがある時に、船長が総員退避の汽笛(短音7回長音1回)いわゆる"タンナナチョウイチ"が鳴ったら脱出せよ!と、教えられた。その訓練だった。
  海水浴場から数百メートル沖の場所にある練習船まで泳いで渡り、船の甲板から海面まで正しい姿勢で飛び降りる訓練だった。
大型の船舶から脱出する場合、海面までの高さはおよそ7メートルの高さになる。
片手でライフジャケットを抱え込み、鼻を摘んで足から飛び降りるように!と、教えられた。
  その日は、訓練の様子を取材するテレビ関係者や新聞記者が来ていた。
友人達と、最初に泳いで辿り着けた者が、"撮影される権利"を獲得できるんじゃないかとコソコソ話をしながら訓練を開始した。
真っ先にクロールで練習船に辿り着いたのが、目立ちたがり屋の「でらしゅー君」だった。
私は3番手だったので、チョット悔しかった。
  船上の教官から再度指示を受けながら、いよいよ飛び込む時が来た。
でらしゅー君は、目立ちたがり屋なので、現代で言う"インスタ映えならぬメディア映え"を狙い、奇声を発しながら前宙して空を舞い海面に落ちていった。
3番手の私も、教官の注意を無視し、調子に乗って前宙避難を試みた。
海面に、顔面から着水し、鼻血が止まらなかったのを覚えている。
  その後、砂浜に帰還すると、待っていたのは教官のお叱りだった。
私を含め、5人程が新聞記者の目の前で体罰を振るわれ、問題になったものである。
体罰を手段とする教育は間違い。という風潮が流れていた当時の時代でも、生徒想いで注意してくれた熱血教師だった。
ストレートで、歯に絹着せぬ物言いが心に響いたのを思い出す。
  当時の出来事は、でらしゅー君に会うたびに"教官が正しかった"と語らざるを得ないネタである。
"本当の正しさ"に気付けたのは教官に出会えたからである  ~明日もボンボヤージュ~
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北上いちご園農園主

Author:北上いちご園農園主
岩手県北上市にある観光いちご園、北上いちご園農園主のブログです。

このブログは、元船乗りを経て2014年に新規就農した農園主が、
農園の様子や、いちご作りの様子等を紹介しています。


※ボンボヤージュとは、
船出の際、「よき航海を!」
と、旅立つ人々への挨拶です。

ホームページは、下のリンクにあります。

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